どこからが医療行為?介護士ができること・できないこと

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この記事で分かること
  • 介護士が利用者に対して実施できること・実施できないことが分かる
  • 医療ケアと医療行為の違いが分かる
ナカタ
ナカタ

こんにちは、ナカタです。
2009年から働く現役ナースです。
病院・施設で勤務歴があり、転職歴4回。
現在は高齢者施設で働いています。

高齢者施設で働き始めた当初、介護士の仕事の範囲が分からず、困ることが多々ありました。
わたしの勤める施設では、利用者30名につき看護師の1人程度の配置となっています。
「介護士と連携して、利用者の健康と暮らしを守ること」が仕事となりますが、
「介護士のできること・できないこと」が分からなければ、協力を得ることもできません。

看護師が1人で仕事を抱えすぎたり、実施してはいけないことを介護士に依頼しないように、
「介護士ができること・できないこと」を調べてみました。

介護士は「医療ケア」を提供できます
「医療ケア」とは、在宅で家族などが
日常的に行う医療的生活援助
のこと。
医師や看護師が行う「医療行為」とは
区別されています。
介護士が行ってよい行為については、
厚生労働省から明示されています。
内容を下記の表にまとめました。

介護士ができること【備考
1 水銀体温計・電子体温計を脇に挟んで測る、
 耳式電子体温計により外耳道で測る
2 自動血圧測定器で測る、
 半自動血圧測定器(ポンプ式を含む)で測る
3 パルスオキシメーターを装着し酸素飽和度を測る・入院治療が必要な方は不可
4 軽微な切り傷・擦り傷・火傷などの処置をする・専門的な判断や技術が必要な処置、
 褥瘡の処置は不可
5 皮膚へ軟膏を塗る・専門的な配慮が必要な場合、
 利用者の容態が不安定な場合、
 本人や家族の合意がない場合は不可
6 皮膚へ湿布を貼る・同上
7 点眼薬を点眼する・同上
8 一包化された内用薬を内服を介助する・同上
9 点鼻薬を鼻腔内に噴霧する・同上
10 肛門から坐薬を挿入する・出血リスクなど、
 専門的な配慮が必要な場合は不可
11 爪切りをする・爪の異常、化膿や炎症がある場合、
 糖尿病などの疾患に伴う専門的な
 管理が必要な場合は不可
12 マウスケアをする・重度の歯周病などがあれば不可
13 耳垢を除去する・耳垢塞栓の場合は不可
14 ストマのパウチ内にたまった排泄物を除去する・パウチの取り替えは不可
15 自己導尿を補助する(準備、体位の保持など)
16 市販のグリセリン浣腸器を用いて浣腸する
 ※ 挿入部の長さ5-6cm以内、
  グリセリン濃度50%、
  成人用で40g以下のものを使用
・左記以外の浣腸器は不可
17 インスリンの投与の準備・片付けをする
 ・声かけ ・見守り 
 ・測定された血糖値の確認
 ・未使用の注射器などを手渡す
 ・インスリン注射器の目盛りを確認する 
 ・使い終わった注射器を片付ける
・血糖値や食事量が不安定な場合は不可
・注射器の針を抜いて処分する行為は不可
18 血糖測定の介助・確認をする
 ・持続血糖測定器のセンサーの貼付
 ・当該測定器の測定値の読み取り
 ・測定された血糖値の確認
19 経管栄養の準備・片付け等をする
 ・経管栄養の準備
 ・経管栄養の片付け
 ・栄養チューブの固定テープが、
  剥がれり汚れりした時の貼り直し
・経管栄養の注入は不可
・経管栄養の注入を
 停止する行為は不可
・専門的な管理が必要な場合、
 皮膚に異常がある場合は不可
20 喀痰吸引の準備・片付け等をする
 ・吸引器に溜まった汚水の廃棄
 ・吸引器に入れる水の補充
 ・吸引チューブ内を洗浄する水の補充
21 在宅酸素療の準備・片付け等をする
 ・指示された酸素流量の設定
 ・酸素マスクやカニューレの装着等の準備
 ・ズレた酸素マスクやカニューレを戻す
 ・酸素離脱後の片付け
 ・加湿びんの蒸留水の交換
 ・機器の拭き取りなど環境整備
 ・在宅人工呼吸器を使う方の体位変換時、
  医師や看護職員の立ち会いのもと、
  人工呼吸器の位置を変える
・酸素吸入の開始や停止は不可
22 膀胱留置カテーテルの管理等を行う
 ・蓄尿バックからの尿廃棄
 ・蓄尿バックの尿量や尿の色の確認
 ・チューブの固定テープが外れた時の貼り直し
 ・カテーテル挿入中の方へ陰部洗浄

介護士は、「医療行為」はできません。
「医療行為」とは、傷や病気の診断・
治療、または予防のために、医学に
基づいて行われる行為
のことです。
人に危害を与える可能性があるため、
医師・看護師などの医療資格者にのみ
認められています。
摘便・血糖測定・インシュリン注射・
点滴の管理などが該当します。
相手からお願いをされたとしても、
介護士は安易に応じてはいけません。

最悪の場合、人命に関わりますし、
送検される可能性もあります。
無資格で医療行為を行った場合は、
「3年以下の懲役もしくは100万円以下の
罰金」と法律に定められています。

本来は医療行為にあたりますが、
条件を満たした介護職員は、
「喀痰吸引」・「経管栄養」ができます。
「喀痰吸引等研修」は2部構成で、
基本研修と実地研修があります。
得られる技術やケア対象により、
種類が1号-3号に分かれています。
資格取得により月5000円~10000円程
手当が出るところもあるようです。

ざっくりした流れは下記の通り⬇️
1.「喀痰吸引等研修」を受ける
2. 「認定特定行為業務従事者認定証」を
  都道府県に申請し、交付を受ける
3. 「登録事業者」に該当する場所で働く                                

喀痰吸引等研修は、厚生労働省が指定する「特定一般教育訓練給付制度」の対象となっています。                        制度を利用すれば、最大費用の40%(年間上限20万円)の給付を受けることができます。                                                           給付条件や手続きなどは、お住まいを管轄するハローワークにお問い合わせください。                                                                厚生労働大臣の指定を受けている講座は、「教育訓練講座検索システム」で検索もできます。        

種類費用内容できることケア対象
1号約10-20万円講義(50h)
演習
実地研修
喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ)
経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)
不特定多数
2号約10-20万円講義(50h)
演習
実地研修
喀痰吸引(口腔・鼻腔)
経管栄養(胃ろう・腸ろう)
不特定多数
3号約5万円講義+演習(9h)
実地研修
喀痰吸引(口腔・鼻腔・気管カニューレ)
経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)
特定者のみ

介護士が実施してもよい医療ケアには、細かな決まりがあります。
違反することで、利用者に危害が加わる可能性、介護士が送検される可能性があります。          

福祉の現場では、介護士との連携は欠かせません。
看護師として、利用者と介護士を守るためにも、知っておくことが大切です。

福祉の現場で働いている方、これから働こうとしている方の参考になれば幸いです。

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