意外とハード?!介護施設看護師の実態:仕事内容、メリット・デメリット

転職
この記事で分かること
  • 高齢者施設における看護師の仕事
  • 看護師が高齢者施設で働くメリットとデメリット
ナカタ
ナカタ

こんにちは、ナカタです。
2009年から働く現役ナースです。
病院・施設で勤務歴があり、転職歴4回。
現在は高齢者施設で働いています。

厚生労働省によると、2020年末時点で看護師は約170万人おり、
勤務先の内訳は、病院60%、診療所20%、介護保険施設10%、訪問看護5%程度なのだそう。

わたしは、高齢者施設の訪問看護ステーションと介護付有料老人ホームでの勤務歴があります。
病院外へ転職するにあたり、周りから「もったいない」と反対されました。
「知識も技術も身につかないよ」「給料安いでしょ」など、いろんな声を頂きました。

少数派である施設勤務者となり、実際に働いてみて分かったことをご紹介します。

施設の種類は多くて複雑…
転職を考えるのなら、
特徴は知っておく方がいいです。
ざっくりとですが、
主な介護施設を下記にまとめました。
有料は更に種類が分かれていて、
介護付・住宅型・健康型があり、
介護度や医療・介護報酬が違います。
老健の多くは夜勤があり、
特養・有料では夜勤がない代わりに
夜間オンコール当番があります。
グループホームやサ高住は、
看護師の配置義務はありませんが、
施設が雇用している場合もあるし、
外部から訪問看護師として介入する
場合もあります。

名称施設の特徴対象者看護師の配置
介護老人保健施設(老健)在宅復帰を目指しリハビリする要介護1~あり
特別養護老人ホーム(特養)介護度が高い方の終の住処要介護3~あり
介護医療院慢性的に医療を受けて暮らす要介護1~あり
グループホーム認知症高齢者が共同を生活する要支援2~なし
介護付有料老人ホーム(有料)高齢者の健康と生活を支える60~65歳~あり
サービス付高齢者住宅(サ高住)比較的自由なバリアフリー賃貸60~65歳~なし

【役割】

  • 健康管理
  • 服薬管理
  • 医療ケア
  • 安全対策
  • 感染対策
  • 看取り
  • 他職種との連携
  • 関連書類の作成

施設は「生活の場」であるため、 病気の治療よりも暮らし優先。
看護師の主な仕事は「健康管理」です。
基本的にはルーティンワークなので、穏やかに働くことができます。
ただ、配置義務がない限り医師は常駐していないので、状態悪化時は判断を迫られます
その点では、病院と比べて個人にかかる責任・負担は大きいのかもしれません。

【施設内における仕事の特徴】

  • 身体介護は、ほぼ入らない
  • 外傷・転倒・火傷・嘔吐など、
    日常で起こるようなトラブルが多い
  • 日常的なケアについては、
    介護士に説明し協力を依頼する
  • 体調の悪い方がいれば、
    介護士に観察してほしいこと、
    協力して欲しいこと、
    緊急性の高い状態について
    説明しておく必要がある

施設内において、利用者へのケアは介護士と役割分担して行います。
おむつ交換・移送・入浴など身体介護は主に介護士が行うため、体の負担は軽いです。
施設では看護師が圧倒的に少ないので、介護士との連携は欠かせません。
外傷・皮膚トラブル・病状の悪化など、看護師を呼ぶケースについては、
事前に介護士へ説明して協力を依頼したり、応急処置について指導することもあります。
業種が違うため、医療用語は避け、介護士ができる範囲内で依頼しなくてはなりません。
また、病院のように、教育制度が整っている施設ばかりではないので、
個々の介護士の技術力・理解力に差があることも理解しておくことが必要です。

【通常業務】
施設で日常的に使う看護技術は、
病院に勤務していれば
経験するものが大半です。

  • 検温
  • 爪切り
  • 耳垢除去
  • 感染予防
  • インフルエンザ・疥癬
    など感染対策
  • 投薬
  • 吸引
  • 採血
  • 注射・点滴
  • 血糖測定
  • インシュリン注射
  • 創処置
  • 尿道カテーテルの
    挿入・管理
  • ストーマケア
  • 経管栄養
    (胃ろうが多い)
  • 中心静脈栄養
    (CV・CVポート)
  • 在宅酸素
  • ペースメーカー
  • 認知症対応
  • 看護記録
  • サマリーの作成

【時々起こること】
医師が常駐していない場合は、
看護師が対応することになります。
下記の状況における対処は
知っておく必要があります。

  • 骨折
  • 頭部外傷
  • 誤嚥
  • 窒息
  • 失神
  • 痙攣
  • 吐血
  • 下血
  • アレルギー
  • 急変
  • 看取り
  • ターミナルケア

【救急車を呼ぶ】
病院勤務では、まず経験しないので、初めはすごくドキドキしました。
聞かれることは大体同じなので、心づもりをしておきましょう。
「119」を押す前に、利用者情報・現場の住所・連絡先を用意しておいてください。
施設内であれば、救急車を呼ぶことを報告するのと同時に、
スタッフへ搬送の荷造り・家族への連絡などを依頼しましょう。

家族が間に合わない場合は、救急車に同乗する人を決めておきます。

  1. 「119」を押す
  2. 「火事ですか?救急ですか?」
    ➡︎「救急」と答える
  3. 「場所はどこですか?」
    ➡︎市町村から住所を答える
  4. 「おいくつですか?性別は?
     どのような状態ですか?」
    ➡︎搬送する方の年齢・状態など
     分かる範囲で伝える
  5. 「電話されている方は?」
    ➡︎自分と搬送する方との関係、
     名前・連絡先を伝える
  6. 「今から◯分で向かいます」            ➡︎スタッフと共有する

一例ですが、施設内看護師のタイムスケジュールをご紹介します。
施設内で急変があれば、スタッフから声がかかることもあります。

時間仕事内容
9時始業 夜勤スタッフから申し送りを受ける
10時検温 処置 昨夜〜朝までの服薬確認 食事量・飲水量・排泄状況の確認 
11時食前薬の与薬 血糖測定・インシュリン投与
12時食事介助 マウスケア 昼の服薬確認
13時休憩60分
14時処置 往診があれば対応
15時翌日分の薬剤の準備 物品の期限・在庫チェック 翌日以降の受診・検査のチェック
16時日誌・看護記録などの記載 本日の食事量・飲水量・排泄状況の確認
17時夜勤スタッフへ申し送り 食前薬の与薬 血糖測定・インシュリン投与
18時退勤  ※ 翌朝までオンコール当番の日もある
  • 身体的な負担が少ない
  • 主にルーティンワーク
  • 残業が少ない
  • 夜勤がない(施設による)
  • 医療処置が少ない
  • 命に関わる事例が少ない
  • 利用者とゆっくり関われる
  • 多方面での知識が身に付く
  • 条件によっては、
    処遇改善手当がもらえる                

病院では関わらない職種と連携し、病院とは違うルールで仕事をします。
様々な疾患を抱える利用者へ看護を提供することになるため、勉強することは多いです。
現在、国から支給されている「処遇改善手当」の対象は主に介護職員ですが、
施設によっては看護職も含めて賃上げしてくれているところもあります。
処遇改善加算のある施設は、職員の待遇改善を意識している職場。
転職を考えるなら、該当するかは調べておく方が良いと思います。

  • 施設によって独特な文化がある
  • 看護職員の数が少ない
  • 40-60代のスタッフが多い
  • 病院勤務時より給料は下がりがち        
  • 介護士との関係性が悪いと、
    かなり大変
  • 医療処置に限りがあるため、
    専門的知識・技術を習得する
    機会が少ない
  • 急変時の判断を迫られる
  • 夜勤が介護スタッフのみの場合、
    事前に起こる事態を想定して
    引き継ぎをしないと、
    オンコールで夜中に起こされる

看護師が少ないので、体調不良でも代わりがいない場合があります。 
病院よりも年齢層が高めなので、人によっては働きにくさを感じるかもしれません。
少人数しかいない看護師間で意見が割れると、方針が決まらない場合があります。
給料面では、残業・夜勤がない分下がりがちです。
各種手当が充実している施設もあり、「日勤のみ」のわりには給料高めな求人もあります。
施設では、利用者との関わりが深い介護士との連携がとても重要です。
働き始めると、看護師・介護士間で不満が出てくることも多々あります。
利用者が快適に暮らせるように、相手の主張も尊重しつつ、話し合う力が必要です。

老年看護に興味があり、規則的な生活を送りたい方は、高齢者施設での勤務がオススメです。

メリット・デメリットはそれぞれありますが、病院とは違う学びがたくさんあります。
介護施設では、利用者だけでなく、介護士・ケアマネージャーなどとの関係がとても大切です。
考え方が違う職種・スタッフを尊重しながら、人間関係を構築することが必要となります。
勤務中は1人でいることが多いので、起こり得る事態を予測して、準備しておく方が良いでしょう。

看護師の勤務先は、「施設」「病院」以外にも、保健所・学校・一般企業など様々あります。
病院以外で働いてみたい方、施設で勤務してみたい方へ、参考になれば幸いです。

コメント